THC(Tetrahydrocannabinol/テトラヒドロカンナビノール)はカンナビスに含まれるカンナビノイドの一種であり、通常大麻に最も多く含まれるカンナビノイドです(CBD優勢の品種も存在します)
THCと言うと基本的にはΔ9-THC(デルタナイン-THC)のことを指します。それ以外にもΔ8-THCやΔ10-THCなどいくつかのTHCが存在しますが、日本国内においてそれらは違法とされています。
Δ9-THCは1964年にイスラエルの化学者Raphael Mechoulamによって初めて発見及び単離され、また、同時期に人体にあるカンナビノイド受容体(CB1, CB2)や、ECS(エンドカンナビノイドシステム)が発見されました。Δ9-THCは、脳内で自然に生成される内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)であるアナンダミドと類似した物質です。アナンダミドは、気分や睡眠、記憶、食欲などを調整する働きがあります。
◆Δ9-THCの効果
◉陶酔作用
◉鎮痛作用
◉吐き気の抑制
◉多幸感や高揚感
◉痙攣等の抑制
◉食欲増進
◉不安の解消
◉うつ病の治療
◉緑内障の治療
◉炎症の治療
◉炎症性腸疾患(IBD)の治療
◉不眠症の治療
◉過敏性腸症候群(IBS)の治療
◉偏頭痛の緩和
◉多発性硬化症の治療
◉筋痙縮の治療
◉オピオイド使用障害の治療
◉心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療
◉発作の緩和
◉HIV/AIDSに伴う症状の緩和
などがありますが、まだ研究が不十分であり、更なる研究が必要とされています。
◆Δ9-THCの摂取方法
大麻にはTHCが含まれていますので、大麻を吸えばTHCを摂取する事になります。
また、大麻を加工した食品や抽出物を摂取した場合もそれと同様です。
◆Δ9-THCの効果持続時間
Δ9-THCの精神作用は経肺接種の場合、通常3-5時間程度持続しますが、摂取量が多ければより長く作用する場合があります。一方、Δ9-THCを経口摂取した場合は、体内で11-Hydroxy-THCと言う別の物質に変わり効果が強力で長くなるので注意が必要です。また、大麻抽出物(ワックス、ダイヤモンドなど)を喫煙した場合も通常よりも強力で長い効果を得ることになります。ただし耐性がついている場合は作用時間が短くなり、強度も落ちます。
◆Δ9-THCの体内貯蔵期間
THCは体脂肪や臓器に3~4週間貯蔵されます。毛包検査では、約90日間THCを特定できる可能性があります。
◆Δ9-THCの副作用は?
THCにはポジティヴな効果がある反面、ネガティヴな効果もあります。
※ただし、THCの毒性はタバコやお酒よりも圧倒的に小さいと言われています。また、アルコールを摂取して事件や事故を起こす人々の数と比較して、THCを摂取して事故や事件を起こす人々は圧倒的に少ない様です。
THCは、青少年と成人の両方において精神病のリスク上昇に関連するという研究ベースの証拠が多くあります。また、不安の増大、学習障害、記憶形成の減少にも関連しています。
2013年に行われたメタアナリシス(過去の多くの研究結果をまとめた研究)では、マリファナを常用している人の脳構造に違いがあることから、THCが神経毒である可能性を示すいくつかの証拠も発見されました。また、大麻を多量に使用した人の前頭前野の灰白質容積が減少していることが研究で示されています。THCの影響に関する研究は多くの要因によって複雑化していますが、THCが有害であるという十分な証拠があり、特に脳がまだ発達途上にある若年層は、マリファナの多用は避けるべきです。
ただしそれらの研究はまだ不十分なため、情報がまだ確実ではないと言えるでしょう。
◆THCの中毒性は?
米国国立薬物乱用研究所(NIDA)によると、大麻を使用する人の約30%が依存症になるとされており、脳がまだ発達している18歳以前に使用すると、大麻使用障害の可能性が4~7倍高くなると言われています。また、大麻使用障害は他の依存症と同様に、薬物へのこだわり、暴飲暴食、禁断症状を伴います。依存症の診断基準には、常に欲求があること、薬物に関連した人間関係や社会的問題があることも含まれます。
◆まとめ
◉大麻に最も多く含まれるカンナビノイドの一つ
◉陶酔作用はあるがそれ以外の副作用は少ない
◉医療効果が注目されている
◉オイルやベイプリキッド、エディブルなどで摂取可能
◉日本では違法